「これ」という共通単位
夜9時。都内某所T大学病院救急センター入り口前にて待ち合わせ。ブロローンと低音のエンジン音を響かせながら、ライトブルーのBMWオープンカー現る。運転席から白衣を渡され、着ておくようにと指示を受ける。眼鏡と白衣を着用し、恥ずかしながら女医に変装して夜に病院内部に潜入。
なにをやってるんだかとお思いでしょうが、これも建築家としての私のお仕事。つまり、BMWで現れし女性は仕事のお施主さん(クライアント)で、現在、大学病院勤務のお医者さん。再来年に独立開業するため、診療所の設計の依頼をうけた。診療所の設計をする上では、現在彼女が仕事をしている現場を視察することが、なによりも大切なのだ。個人住宅を設計する時にもそうなのだが、今住んでいる家を必ず訪問をさせてもらう。そうすることで、その人のライフスタイルや持ち物など様々なことが読み取れ、設計に反映することができるからだ。また、今回の病院潜入の時にも感じたことだが、施主側と設計側で共通の単位を認識できることがとても大事。クライアントの女医さんは、診療室や処置室など各諸室の説明をすると共に、「これよりもうちょっと広くほしい」とか「このような置き方が使いやすい」等々、実際の経験と重ねてスペースの大きさや配置関係を伝えてくれる。いくら1:100や1:50の図面を広げて何平米の部屋でとか何mmの寸法でと説明しても、図面など見慣れていないクライアントにとって実寸として認識するのは大変難しい。
この「これより広く」とかいう「これ」という共通単位を持つということが大変有効なのだ。現場視察は、実寸として1:1のスケールとして施主と対話できる着実な方法なのだと思う。各部屋の寸法を実測して、写真をとり、診療の内容や希望内容のメモをとり、深夜11:30病院潜入終了。
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