ドイツ写真の現在 トーマス・デマンド
竹橋の国立近代美術館でやっている「ドイツ写真の現在」という展示を見ました。今年はドイツ年ですね。写真のことはよくわからないのですが「光の芸術」とか「瞬間の美」とかいう印象は漠然と持っていました。ドイツ人作家10人の出展でどれも精巧かつどこか静かで、印象深い展覧会でしたが、その中のトーマス・デマンドという作家の作品、びっくりしました。
彼の作品はどれもちょっと彩度の高い、けれど無人の室内を被写体としていました。整然、静寂、でもどこか不気味。近づいてよく見ると被写体のすべては紙で製作されているのです!パンフレットの解説を見ると「原寸のペーパーモック」とありました。しかもモチーフの室内はそれぞれドイツの歴史的事件の現場を再現しているそうな。例えば「浴室」はある大統領の浴室での変死事件を、空港のX線チェックゲートのような「ゲート」は猟奇連続殺人事件のとある瞬間を。ドイツ人が見ると「あ、あの事件だ」と当時の報道写真が浮かぶような、そんな場面を再構築しているようです。
これまではある偶然の一瞬を切り取るのが写真作品で、その偶然をつかまえることに優れた人が写真家と思っていましたが、そうではないんですね。切り取る瞬間は偶然ではなく、作家によってかなり意図的に"つくられた"ものなんだと感じました(構図決定であれ、紙モックという方法であれ)。他にもロレッタ・ルックスという作家は被写体である「子供」と「背景」をデジタル処理で分けて仕上げることでつくりこんでいたり、アンドレアス・グルスキーという作家は「圧倒的な数」をトコトン追求した作品を見せていました(牧場の牛々とか駅の人とか)。写真も絵画と同じで意図的にゼロから構成されている、細部まで必然的なものなんですね。デザインもそういうものだと思います。
![]() | Thomas Demand Roxana Marcoci Thomas Demand Jeffrey Eugenides by G-Tools |
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